このシリーズは全7回。基軸通貨ドルが抱える構造的な問題と、日本人投資家の視点からトランプ外交を読み解く。
前回: 【第1回】80兆円の正体
アメリカが抱える財政の現実は、ひとつの数字に集約される。
2024年度、米国連邦政府が支払った利息は8,810億ドル。同年の国防費は8,500億ドルだった。利払いが国防費を上回ったのは、1940年以来初めてのことだ(出典:議会予算局CBO)。
国家の安全保障に費やす金額より、借金の利息の方が多い。それが今のアメリカの財政の現実だ。
問題はその利払いの行き先だ。米国債の約30%、金額にして8.5兆ドルは外国の政府・投資家が保有している(米財務省TICデータ、2024年12月)。日本が1.19兆ドルで世界最大、中国が0.8兆ドルで続く。8,810億ドルの利払いのうち30%、つまり約2,600億ドルが毎年海外に流出している計算になる。
ここに基軸通貨国の「バグ」がある。
ドルが世界の基軸通貨である限り、世界中の政府・企業・投資家がドル建て資産を必要とする。その需要があるからこそ、アメリカは低コストで世界から借金ができる——これが「基軸通貨の特権」だ。
しかしインフレが起きて金利を引き上げると、この構造が逆回転する。利払いが膨らみ、そのコストの一部は日本や中国の国庫に流れ込む。アメリカの納税者が汗水流して払った税金が、利払いとして海を渡る。インフレを抑えようとするほど、富の海外流出が加速するという矛盾だ。
これは金融政策の失敗ではなく、基軸通貨国が利上げを使う際に構造的に生じる欠陥だ。教科書は「インフレには利上げ」と教えるが、その処方箋はドルが世界通貨である現実を織り込んでいない。
では、アメリカの庶民はこの構造の中でどう苦しんでいるのか。次回はその実態を数字で見ていく。
前回: 【第1回】80兆円の正体 次回: 【第3回】利上げが庶民を二重に苦しめる理由
出典: CBO: Monthly Budget Review FY2024 | CRFB: Interest Costs Surpassed Defense | 米財務省TICデータ
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