東京エレクトロン(8035)4月30日の決算発表前に確認すべき5つのポイント

東京エレクトロン(TSE:8035)は2026年4月30日、2026年3月期(FY2026)の通期決算を発表する。国内最大・世界第3位の半導体製造装置メーカーで、日経225の構成銘柄でもある同社の決算は、半導体装置業界全体の温度計でもある。

今回、数値そのものはほぼ事前に折り込まれている。市場が本当に注目するのはFY2027に向けた会社ガイダンスと経営陣のコメントだ。4月30日の発表前に確認すべき5つのポイントを整理する。


前提:減益の踊り場か、構造的な下落か

FY2026はレコードイヤーにはならない。FY2025が売上高約2兆4,300億円(前年比+32%)・営業利益6,990億円と過去最高を記録した後、FY2026は中国市場の正常化とNAND投資の一服という2つの逆風を受けた。

FY2026 通期予想(第2四半期に上方修正済み):

指標 通期予想 前年比
売上高 2兆4,100億円 -0.9%
営業利益 5,930億円 -15.0%
営業利益率 約24.6% -4pp
配当 601円/株 +12.7%

利益が減るのに配当を増やすのは、経営陣がこれを「一時的な踊り場」と見ている証左だ。

第3四半期累計(2025年4〜12月)では売上高1兆7,317億円(-2.5%)、営業利益4,192億円(-18.3%)。通期予想に届くためには第4四半期(2026年1〜3月)に売上高約6,800億円、営業利益約1,740億円が必要で、これは第2四半期水準に近い数字だ。Q3決算説明会では第4四半期の受注モメンタムが強まっているとのコメントがあった。


注目点1:誰も語らない「コータ/デベロッパ独占」

TELに関する報道はCVD装置やエッチング装置に集中しがちだが、より重要なのがコータ/デベロッパだ。フォトレジストをウェーハに塗布・現像するこの装置で、TELは世界シェア約90〜92%を握り、EUV露光向けに限ると100%独占という状況にある。

TSMCでも、Samsungでも、Intel Foundryでも、EUV露光で先端チップを量産するためにはTELのコータ/デベロッパが不可欠だ。EUVが先端ロジックからHBM向けDRAM、さらにNANDへと拡大するにつれ、TELのアドレス市場は構造的に拡大し続ける。競合が存在しない。

注目ポイント:コータ/デベロッパの受注残と、メモリ向けEUV展開に関する経営陣コメント。


注目点2:AI向け売上比率が40%に拡大

TELはAI関連チップ製造に向けた装置売上の比率を明示的に公表しており、Q3時点で約40%に達した(FY2025の約25%から大幅に上昇)。

AI向けチップ製造は、成熟ノードに比べてウェーハ1枚あたりのプロセス工程数が大幅に多い。追加の工程ステップは追加の装置販売を意味する。

2026年暦年のWFE(前工程製造装置)市場は過去最高の更新が見込まれており、3つの需要サイクルが同時進行している:

  • ロジック:TSMC N2/A16の設備投資(AI推論チップ向け)
  • HBM/DRAM:Nvidia・AMD・カスタムAIシリコン向けHBM3E・HBM4の爆発的需要
  • 先端パッケージング:CoWoS・ハイブリッドボンディングが新しい装置カテゴリを創出

注目ポイント:2026年暦年のWFE市場規模予測と、FY2027のAI向け売上比率ガイダンス。


注目点3:中国比率47%→35%、底打ちはどこか

FY2024第4四半期のピーク時、中国はTEL四半期売上の47.4%を占めた。輸出規制強化を見越した中国半導体メーカーの駆け込み投資が背景にあった。その波は引いた。

FY2026第3四半期時点で中国の比率は約35%に正常化し、長期平均に近い水準に戻っている。

焦点は「35%が底か」「さらに低下するか」だ。米国または日本の輸出規制が一段と強化された場合、比率が25%まで低下すれば年間で約2,000〜2,500億円の売上が消える計算になる。AI需要の拡大があっても相殺しきれない水準だ。

注目ポイント:FY2027の中国売上比率ガイダンスと、輸出規制に関する経営陣の見解。


注目点4:R&D・設備投資が過去最高 — 強気の証拠

TELはFY2026に研究開発費3,000億円設備投資2,400億円を計画しており、いずれも過去最高だ。サイクルの踊り場で投資を絞る企業とは対照的に、TELは先行投資を加速させている。

R&Dの重点領域は3つ:

  • 原子層堆積(ALD):GAA(ゲートオールアラウンド)トランジスタ向け(TSMC N2以降に必要)
  • 高アスペクト比エッチング:3D NAND 300層超のスタッキング向け
  • 次世代フォトレジスト塗布システム:High-NA EUV向け

いずれも2030年代まで続く製品サイクルの種だ。

注目ポイント:FY2027のR&D・設備投資計画と新製品ロードマップ。


注目点5:FY2027ガイダンスこそが最大の催触剤

TELの株価は2024年半ばの安値から2倍以上に上昇しており、市場はFY2027の急回復を织り込んでいる。市場が想定する営業利益は8,000〜9,000億円 — FY2025の過去最高(6,990億円)を20〜35%上回る水準だ。

このシナリオが成立するための条件: - TSMCのN2ラインが計画通り立ち上がり、TELがN2向け装置シェアを確保する - HBM需要が2027年暦年にわたって構造的に維持される - 中国の売上比率が35%程度から崩れない - 輸出規制の追加強化がサービス収益に波及しない

経営陣の過去3年間のWFE市場予測精度は高い。4月30日のFY2027ガイダンスで売上高2兆7,000億円超が示されれば、「強気シナリオの検証完了」と市場は受け取るだろう。

注目ポイント:FY2027の売上高・営業利益初回ガイダンス数値。


まとめ

FY2026は2つのピークをつなぐ「踊り場」だ。数字そのものはほぼ折り込み済みで、4月30日の決算発表は事実上ガイダンス発表イベントと言える。

構造的な強み — コータ/デベロッパの独占的地位、AI起因の長期装置投資サイクル、記録的なR&D投資 — は変わらない。問いは「リカバリーを株価は織り込んでいるか、それとも上昇余地は残っているか」だ。


出典: 東京エレクトロン IR | English version

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