SUBARUの「隠れ防衛株」——中島飛行機のDNAから第6世代戦闘機の僚機ドローンへ
SUBARU(TSE:7270)といえば、アウトバックやフォレスターを作る四輪駆動の自動車メーカーというイメージが強い。しかし2025年7月、同社は防衛装備庁に最新の遠隔操作型支援機(実験機)を納入した——第6世代戦闘機と連携するロイヤルウイングマン(忠実な僚機)技術の中核を担う研究機だ。
そしてこの能力は、一世紀以上前に遡る歴史の上に成り立っている。
中島飛行機という原点
SUBARUは副業で航空機を作っている自動車会社ではない。戦後の制約の中で70年間、車を作り続けた航空機会社だ。
1917年、中島知久平が創業した中島飛行機は、アジア最大・世界屈指の航空機メーカーへと成長した。ゼロ戦(零式艦上戦闘機)の総生産機数の3分の2を中島が担い、設計元の三菱を上回る3万機以上を製造。エンジン・機体・量産技術を独自に開発する能力を持ち、当時の日本が誇る最高の工業技術集団だった。
1945年の敗戦で占領軍に解体され、富士産業→12社に分割という経緯を経て、1953年にそのうち5社が再結集して富士重工業を設立。エンジニアたちはそのまま新会社に移り、技術と企業文化を引き継いだ。その富士重工業が2017年にSUBARUに社名変更した——創業100周年の年に。
自動車は現実的な選択だった。しかし航空のDNAは消えていなかった。
無人機800機の実績、そしてロイヤルウイングマンへ
SUBARUは1970年から無人航空機の開発・製造を続けている。これまでに20機種・800機以上を陸上自衛隊などに納入——主に無人ヘリコプターによる偵察・監視任務向けだ。新興の航空宇宙ベンチャーではなく、半世紀の運用実績を持つ成熟した事業だ。
2023年12月には防衛装備庁とVTOL型ドローンの概念実証業務委託契約を締結。そして2025年7月9日、「遠隔操作型支援機技術の研究」に関する実験機を防衛装備庁に正式納入した。有人戦闘機と連携して飛行する無人機——いわゆるロイヤルウイングマンの技術基盤となる機体だ。
2025年10月には防衛装備庁が5機のジェット推進無人機による編隊飛行のMUM-T(有人・無人連携)デモンストレーションを実施。ヘリコプター内からタブレットで無人機を制御する試験が行われ、SUBARUの実験機がその中心にあった。
第6世代戦闘機(GCAP)との接点
日本は英国・イタリアとともにGCAP(グローバル戦闘航空プログラム)に参画し、2035年の初期運用能力取得を目指して第6世代ステルス戦闘機を共同開発している。2026年4月3日には3カ国が8億5700万ドルの初の共同契約を締結し、プログラムが本格始動した。
GCAPのコンセプトでは、有人戦闘機が司令機として複数のロイヤルウイングマンを指揮し、偵察・攻撃任務を遂行する。MUM-T実験を防衛装備庁と進めているSUBARUは、この無人機コンポーネントの有力候補だ。正式な契約はまだ発表されていないが、布石は打たれている。
市場が見落としている数字
市場はSUBARUを苦境の自動車メーカーとして評価している。
| 指標 | 値 |
|---|---|
| 株価 | 2,571円 |
| 時価総額 | 約1.84兆円 |
| PER | 7.1倍 |
| PBR | 0.67倍 |
| 配当利回り | 4.5% |
| 決算期末 | 3月31日 |
| 決算発表日 | 2026年5月15日 |
PBR0.67倍・PER7倍・配当利回り4.5%は、存亡の危機に瀕した企業の水準だ。しかし航空宇宙部門の成長と日本最大の防衛費拡大という文脈は、この評価に織り込まれていない。
日本のFY2026防衛予算は9兆円超(前年比+9.4%)、GDP比2%に向けて拡大中だ。2026年4月にはアパッチ攻撃ヘリを廃止してドローンに切り替える方針も発表された——SUBARUが開発している正にその領域の需要が拡大している。
5月15日の決算で何を見るか
SUBARUの航空宇宙セグメントは直近本決算で増収・黒字化している。民間機向け(ボーイング機の中央翼)と防衛向けの両輪が動き始めた。5月15日の本決算発表では3点に注目したい:
- 航空宇宙セグメントの売上・利益 — 全体に占める比率が高まっているか
- 受注・契約の言及 — 公表済み以外のUAV・防衛契約への示唆
- 経営陣のトーン — 防衛事業を戦略的優先事項として語り始めているか
自動車部門の逆風(EV転換コスト、北米関税リスク、販売台数の伸び悩み)は現実のリスクで、現在の低バリュエーションはその反映でもある。しかしそのリスクの影に、市場がまだ評価していない防衛資産が隠れている。
長期の視点
SUBARUはピュアな防衛株ではない。自動車が本体であることに変わりはなく、その課題も現実だ。しかし中島飛行機から連なる100年の航空技術、800機以上の無人機納入実績、防衛装備庁への最新UAV納入、GCAP隣接ポジションという組み合わせは、PBR0.67倍には価格付けされていないオプションだ。
日本の防衛費拡大が構造的・多年度にわたると信じ、自動車の逆風を乗り越えながら保有できる投資家には、5%近い利回りと割安なバリュエーション、そして市場未発見の防衛オプションという三つが揃っている。
5月15日が最初のチェックポイント。航空宇宙の数字を見逃さないように。
出典: SUBARU 防衛装備庁へ実験機納入(公式) | GCAP共同契約(Japan Times) | English version
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