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半導体製造用の高純度化学材料を手掛けるニッチメーカー、トリケミカル研究所(4369)の中間決算は、自社予想を大きく超える着地となり、決算発表と同日に通期予想の上方修正まで出す事態になった。中間売上高は147億円(前年同期比+18.8%)だが、より注目すべきは今年3月に公表した自社予想との差だ。営業利益は**+29.7%、経常利益は+46.5%、親会社株主に帰属する中間純利益は+54.0%**という大幅な上振れ。同日発表の通期予想も同程度の幅で引き上げられた。控えめな計画を静かに超えた、というレベルではなく、5カ月足らずで自社の見通し自体が現実に追い越された格好だ。

地域別売上高(今期中間期 vs 前年同期) 図1: トリケミカルの顧客所在地別売上高、今期中間期と前年同期の比較

上振れの中身は2カ国に集中している

トリケミカルの事業は「半導体等製造用高純度化学化合物事業」の単一セグメントで、製品ラインの多角化による分散は効かない。決算短信で開示されているのは顧客の所在地別売上で、ここに実態が表れている。中国と台湾を合わせた比率は**中間売上高の73.4%**に達し、前年同期の66.8%から拡大した。地域別の伸び方も偏っている。中国が前年同期比+25.5%、台湾が+36.9%と伸びる一方、日本(-0.5%)、韓国(-2.1%)、その他地域合計(-25.8%)は横ばいか減少。今期の増収分は、実質的にほぼ中国と台湾の2カ国だけで説明できてしまう。

用途別では、先端ロジック半導体の絶縁膜に使われるHigh-k材料が売上の約半分(48.5%)を占め、世界的にも高いシェアを持つとされる。残りは金属膜用材料(21.7%)、エッチング材料(12.7%)など。会社側は上振れの理由として、生成AI向けデータセンター投資を背景にした先端ロジック・メモリ向け投資意欲の堅調さに加え、韓国の関連会社SK Tri Chemの持分法投資利益の増加を挙げている。

当初計画に対する上振れ幅 図2: 3月公表の当初計画に対する上振れ幅、中間実績と通期修正予想

装置と違い、材料の内製化は簡単ではない

売上の4割を中国が占める企業と聞けば、「中国が自国でサプライチェーンを完結させたらどうなるのか」という疑問が自然と湧く。半導体製造装置であればこれは現実的な脅威だ。中国の装置メーカーは露光機・エッチング装置・成膜装置の国産化を目に見える形で進めており、政府も装置の自給化を国家戦略として明確に掲げている。

だが材料は事情が異なる。物理的な機械を分解してリバースエンジニアリングするのと、ppb〜pptレベルの不純物管理・独自の合成プロセスのノウハウ・各ファブの製造ラインごとに必要な個別のすり合わせ(新規サプライヤーとして採用されるまでの認定プロセス)を再現するのとでは、難易度がまったく違う。分解して真似る対象がそもそも存在しない。これこそが、トリケミカルのようなニッチ企業が特定の材料カテゴリで「世界高シェア」を握れている根本理由であり、中国が装置の自給化にどれだけ成功しても、それ自体はこの会社の事業を直接脅かすものではない。むしろ中国国内で装置の内製化が進み稼働するファブが増えるほど、そのファブが依然として外部から調達する必要のある特殊材料の需要はむしろ増える方向に働く。

この構図が崩れるとすれば、そこではない

だからといって集中リスクが消えるわけではなく、リスクの所在が移るだけだ。この構図が本当に崩れうるのは、中国の技術的なキャッチアップではなく、輸出規制の方向転換だ。日本は2023年以降、米国・オランダと歩調を合わせる形で半導体製造装置の対中輸出規制を段階的に強化してきた。材料は今のところ同じ規制体系には組み込まれておらず、現時点で半導体材料全般への広範な対中輸出規制は存在しない。ただしこれは技術的な壁ではなく政策判断であり、政策は材料化学の進歩よりずっと速く動きうる。もし地政学的圧力が装置と同様に材料にも及ぶ事態になれば、これほど中国顧客に集中した企業は即座に影響を受ける。装置の模倣シナリオと違い、こちらには「構造的にありえない」と言い切れる根拠がない。

さらに指摘しておきたいのは、他地域での分散もほぼゼロだという点だ。米国・欧州を含むはずの「その他地域」は売上構成比でわずか2.9%、しかも前年同期比-25.8%と縮小している。中国・台湾需要に何かあった場合に緩衝材となる第三の市場は、実質的に存在しない。

注目ポイント

  1. 上振れが一過性か定着するか: これほど自社予想を超える着地は、当初計画が保守的すぎたのか、中国・台湾の設備投資ペースがそもそも持続的なのかを見極める必要がある
  2. 材料への輸出規制の有無: 現時点では存在しないが、装置と同様の規制が材料にまで広がれば、集中リスクは理論上のものから即座に現実のものへ変わる
  3. SK Tri Chemの寄与度: 韓国関連会社からの持分法投資利益が、グループの営業利益の伸びを上回るペースで増加しており、利益の一部が直接的な経営コントロールから一歩離れた場所で生まれている

出典: 第2四半期決算短信(TDnet) | 業績予想の修正(TDnet) | IR | English version

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