2026年3月の記事でこんな問いを立てた。「そもそも、誰がEVを欲しがっていたのか?」
EV義務化の推進力は規制当局・環境団体・ESG投資家・政治家から来ていた。消費者は二次的な考慮対象に過ぎなかった。補助金が枯れると販売が止まり、充電インフラが整わないと購入者が二の足を踏んだ。市場は静かだが明確な評決を下した。ホンダが北米でEVモデル3車種をキャンセルし最大2.5兆円の費用を計上したとき、多くのメディアはEV戦略の失敗と報じた。私たちの読み方は異なった——これは政策主導の投資サイクルからの合理的な撤退だ、と。
本日発表された三菱自動車工業(TSE:7211)のQ1 FY2027決算は、ホンダ記事が残した問い——「EV回避の果実はいつ、どう現れるか?」——への部分的な答えを出している。
決算数値
| 指標 | Q1 FY2027 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6,199億円 | +1.8% |
| 営業利益 | 101億円 | +78.8% |
| 経常利益 | 97.4億円 | +101.3% |
| 当期純利益 | 14.1億円 | +91.2% |
| 営業利益率 | 1.6% | — |
| 自己資本比率 | 39.6% | — |
売上+1.8%、営業利益+78.8%。売上増収ではなくコスト構造の話だ。
三菱自が選んだ道
ホンダが北米BEVに投資し、日産がブランドをEVに賭けていた時期、三菱自は静かに別の選択をした——東南アジア市場でPHEV(プラグインハイブリッド)に集中することだ。
アウトランダーPHEVはCESのヘッドラインを飾らない。シリコンバレーのインフルエンサーがレビュー動画を作ることもない。しかしタイ、インドネシア、フィリピンでは——都市圏外の充電インフラがほぼ存在しないこれらの市場では——必要なときはガソリンで、可能なときは電気でという選択肢が持つ実用価値は本物だ。EV義務化が無視した消費者ニーズは、東南アジアではより切実な形で存在していた。
今期のQ1は、その選択が利益に現れ始めたことを示す。売上がほぼ横ばいのまま営業利益が78.8%増えた背景には二つの要素がある:
- コスト規律:日産・三菱・ルノーアライアンス再編後の固定費削減が継続。売上回復に固定費が連動しなかった
- ミックス改善:PHEVは同等のガソリン車より価格プレミアムを取りやすく、購入者の上位グレード比率も高い
消えていないアライアンスリスク
ホンダ・日産の記事は「日産に対する消費者評価はすでに出ている」と指摘した。問いは日産が回復するかどうかではなく、いつ幕が下りるかだ、と。
三菱自動車は日産・ルノー・三菱アライアンスの一員だ。日産ではないが、プラットフォーム開発・購買・資本配分で深く連動している。日産の財務・事業がさらに悪化した場合、三菱自が自社事業で好業績を出していても波及は免れない。
自己資本比率39.6%(前期38.0%から改善)は日系主要メーカーの中では依然最も低い水準だ。次の外部ショック——関税変更・原材料高・アライアンス混乱——に対する財務バッファは薄い。
1.6%という利益率の問題
営業利益+78.8%は印象的だ。しかし結果として出た利益率は1.6%である。
トヨタは好調期に10〜12%のOPMを出す。ホンダでも5〜7%が標準的だ。三菱自の1.6%は回復途上の数字であり、健全な収益基盤とは言いがたい。
EV記事の核心は「市場の実需に製品を合わせることの重要性」だった。三菱自は東南アジアでそれを実践している。しかし実需に応えることと、十分な投下資本利益率を稼ぐことは別の話だ。1.6%の利益率は次の混乱に対して余裕がほとんどない。
注目点
- 日産アライアンスの安定性:三菱自に対する最大の外部リスク。アライアンス構造の変化はプラットフォーム共有・購買コストを通じて直接影響する
- 東南アジアのBEV義務化動向:タイ・インドネシア政府が中国に倣ってBEV義務化を加速した場合、PHEVアドバンテージが急速に縮まる
- 営業利益率のトレンド:前年同期比0.9%から1.6%への回復は前進だが、持続的な収益性には3〜4%が必要。Q2・Q3でさらに改善するか注視
EVテーゼは「義務化は消費者と乖離していた」という点で正しかった。三菱自のQ1は、その乖離から距離を置いた企業にどんな利益回収が生まれるかを示している。報酬は本物だが控えめだ——1.6%の利益率は、EVの撤退を生き延びたことを示すが、そこから先は別の戦いだ。
出典: TDnet 適時開示(原文PDF) | 決算速報(TSE:7211) | English version
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