THK株式会社(TSE:6481)は、半導体製造装置・産業ロボット・工作機械・医療機器など、あらゆる精密機械の内部に入るリニアガイドとボールねじを作る会社だ。同社が何をしているかを理解すると、産業投資の流れがどこに向いているかが見えてくる。

H1 FY2026の結果は見出しレベルでは例外的に良い。内側はより複雑だ。

見出しの数字

指標H1 FY2026H1 FY2025YoY
売上収益1,511億円1,141億円+32.4%
営業利益225億円61億円+268.9%
営業利益率14.9%5.3%+9.6pt

数字の中の一時益

THKは2026年6月1日、自動車部品子会社のTHK Rhythm(ボールジョイント・タイロッドエンド製造)をAdvantage Partnersファンド系SPCに譲渡完了した。この取引に伴い、累積外貨換算差額の取り崩し益164億円が日本セグメントの営業利益に計上されている。

これを除くと:

  • 報告営業利益:225億円
  • 一時益:164億円
  • コア営業利益:約61億円

コア収益は前年とほぼ横ばいだ。売上が32.4%増えたのに、実態の利益はついてきていない。見出しが示すオペレーティングレバレッジはまだコア数字に現れていない。

戦略的判断は正しい

自動車部品の売却は正しい判断だった。THK Rhythmが作っていたのは内燃機関車向けの機械部品——電動化によって構造的な圧力下にあるカテゴリーだ。EVは可動部品が少なく、ボールジョイントやタイロッドエンドの需要は長期的に縮む。PEファンドに売却して資本をより高収益の産業向けに再配分するのは、構造トレンドへの合理的な対応だ。

経営方針には明確な目標がある——「ROE 10%超の早期実現」。自動車事業はROICを許容水準以下に引き下げていた。切り離すことでポートフォリオが整理される。

問いは「整理されたポートフォリオ」が実際に何を意味するか、だ。

利益が実際にどこから来ているか

地域売上 YoY営業利益OPM
中国+40.9%83億円(+92%)16.7%
日本+18.8%272億円(うち一時益164億円)
その他(印・ASEAN)+39.5%18億円(+707%)
米州+2.4%5億円(-14.8%)1.2%
欧州+2.4%-3億円赤字

中国がセグメント利益83億円を稼いでいる——コア収益の大半がここから来ている。成長は本物だ。中国の半導体製造装置・工場自動化・産業ロボット向けの需要がボリュームを押し上げている。THKの精密部品は、中国が次世代の工場を作るための生産ラインの中に入っている。

インド・ASEANは小さなベースから高成長しており、長期シグナルとしては前向きだ。欧州は改善しているがまだ赤字。

米州が警戒シグナルだ。売上+2.4%に対してOP-14.8%、マージン1.2%に圧縮された。原因は米国関税——決算短信で明示されている。THKは日本で製造してグローバルに供給しており、関税摩擦がすでに米州収益を削っている。

下期の関税問題

H1の米州結果は、すでに10%の関税下でマージン1.2%に追い込まれた状態だ。その後、米国の対日関税は10%から12.5%に引き上げられた

H1米州売上449億円に2.5%の追加コストを当てると、約11億円の増分費用(半期)になる。現在の営業利益5億円に対して、関税が2.5%上がるだけで米州セグメントは構造的に下期赤字に転落する計算だ。現時点で価格転嫁や需要回復のシグナルは見えていない。

中国依存の問題

THKのコア収益は圧倒的に中国に依存している。これは三つの具体的な懸念を生む。

輸出規制リスク。 THKのリニアガイドは半導体製造装置の内部に組み込まれている。日本は特定の半導体製造装置の対中輸出規制を実施している。その境界線が精密駆動部品(デュアルユース品)まで拡張されれば、中国向け売上に直接的な規制リスクが生じる。現状の政策ではないが、ありうる方向性だ。

国産化圧力。 中国の産業政策は外国製精密部品への依存低下を明示的に目標としている。台湾のHIWINは既に有力な競合で、中国メーカーも能力増強に投資している。THKの中国での強さは、国産代替品の品質がまだ追いついていないことに部分的に依存している。そのギャップは時間とともに縮まる。

需要のシクリカリティ。 中国の+40.9%という成長は、半導体・工場自動化カペックスサイクルが高強度で回っているからだ。このサイクルは永続しない。中国の設備投資が正常化すれば、THKのコア収益を支える需要ドライバーも減速する。

構造的なジレンマ

THKが自動車部品から撤退した判断は正しい。残った事業は本質的に質が高い——半導体・自動化・ロボティクス向けの精密部品は、内燃機関車のボールジョイントより守りやすいポジションだ。

不快な現実は、その品質が利益を生む場所の地理にある。コア収益は中国に集中している。米州は関税で採算が悪化し、欧州は黒字に戻っていない。日本の強い数字は大半が一時益だ。

経営陣は自動車の重しを外した事業体への移行を進めている。方向性は正しい。ただし到達した収益構造——地政学・規制・シクリカルの三重リスクを抱える一市場に依存する形——はまだ安定した基盤とは言えない。

通期予想は売上3,100億円(+28.9%)、営業利益480億円(+232.5%)に上方修正。ただし自動車事業売却の一時益込みの数字だ。下期の米州マージンが関税でどこまで悪化するかを注視したい。


出典: TDnet 適時開示(原文PDF) | 決算速報(TSE:6481) | English version

免責事項 | 本記事は情報提供を目的としており、投資推奨・売買指示ではありません。