6月3日、本誌は7月24日に日本への恒久的な12.5%関税が発動されると予告した。その日が今日来た。

Section 301のタイムラインを追っていた者にとって、この発動は驚きではない。投資家が注目すべきは、日本とEUの間に生じた2.5%の差だ。その差は、今後いかなる立法によっても修復できない可能性が高い。そして何より、その差がどのようにして生まれたかが重要だ。


すべてを語る2.5%

USTRのSection 301調査は60カ国・地域を同時に対象とした。振り分けの基準はシンプルだった。強制労働による輸入品を禁止する法律を持つ国が10%、持たない国が12.5%。

地域法的根拠税率
EUCSDDD(2024年7月施行)10%
英国Modern Slavery Act(2015年)10%
カナダ強制労働禁止法(2023年)10%
日本任意ガイドライン(2022年、法的拘束力なし)12.5%

2.5%の差の理由は法律の有無、ただそれだけだ。


EUは5年かけて法律を作った

EUのCSDDD(企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令)の成立経緯を見ると、その本気度がわかる。

  • 2017年 フランスが「注意義務法(Duty of Vigilance Law)」を世界に先駆けて制定
  • 2021年 ドイツが「サプライチェーン法(LkSG)」を成立(2023年施行)
  • 2022年2月 EU委員会がCSDDD草案を正式提案
  • 2023年12月 欧州議会・理事会が暫定合意
  • 2024年7月 発効

フランス、ドイツが先行して国内立法を積み重ね、それがEU全体の指令へと昇華した。立案から発効まで2年半、フランスの先行立法を含めれば7年越しのプロセスだ。法律とは信念の蓄積である。

英国はさらに早い。2015年のModern Slavery Actは10年以上前の立法で、現代奴隷制と強制労働の禁止を明確に法律として持つ。

日本は2022年に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定した。任意。罰則なし。法的拘束力なし。書類が1枚増えただけだった。


中国は日本には強気でEUには下を向く

EUがCSDDDを作れた背景には、もう一つの重要な事実がある。EUは中国から報復を受けながらも、一歩も引かなかった。

2021年3月、EU・英国・米国・カナダは協調してウイグル人権問題を理由に中国高官へ制裁を発動した。1989年の天安門事件以来、約30年ぶりのEU対中制裁だった。中国は即座に報復し、EU議員や研究者に対する制裁を発動した。

欧州議会はひるまなかった。2021年5月、習近平政権が強く望んでいたEU・中国包括的投資協定(CAI)——10年近い交渉の末に合意にこぎついた協定——の審議を全面凍結した。「中国の制裁が解除されるまで審議しない」という宣言だ。

習近平が切望した経済的果実を、欧州議会は人権の原則のために捨てた。

日本は何をしたか。欧米の対中制裁に加わらなかった。「経済関係への悪影響を懸念」という言葉で、参加を回避した。

中国外交の論理は単純だ。押して折れる相手には強気に出る。押しても折れない相手には下を向く。EUは「折れない」を実証した。日本は「折れる」を実証し続けた。


政治家個人の資質の問題

この差を「国家の戦略の違い」と言うのは正確ではない。政治家個人の資質の問題だ。

欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は「デカップリングではなくデリスキング」を掲げながらも、人権問題では中国に対して一貫して毅然とした姿勢を維持した。EUの人権基準は交渉可能な価値ではないという信念が、CSDDDという法律になった。

岸田政権は「聞く力」を掲げた。聞いた相手は経済界だった。経団連をはじめとする財界は「対中ビジネスへの悪影響」を理由にHRDD法制化に反対し、政権はその声に従った。法律ではなくガイドラインを選んだのは、決断を避けるための選択だった。

石破政権は支持率低迷に終始し、通商政策の大局的判断を下すだけの政治的体力を持てなかった。

信念のない政治家は、目先の圧力に従う。経済界の圧力に従った岸田政権は今日の12.5%を選んだ。中国の顔色を伺った日本の政治は、世界標準から取り残された。


今から立法しても下がらない

理屈の上では「これから日本がHRDD法を作れば10%に戻れるのでは」と思いたいところだ。しかし答えはほぼノーだ。

Section 301は大統領行動令によって発動される。修正には新たな大統領行動令が必要であり、日本が立法したとしても自動的に税率が再計算される仕組みは存在しない。

しかもトランプ政権は中間選挙を控えており、一度決めた関税を弱める動きは政治的に不可能に近い。日本だけを優遇する理由もない。

つまり立法しても関税メリットはない。しかし立法しなければ別の問題が生じる。EUのCSDDDはEU域外企業(EU売上高1億5,000万ユーロ超)にも適用されるため、トヨタ、ソニー、ファーストリテイリングといった企業は、日本国内に法律がなくとも、EU向けにサプライチェーンの人権デューデリジェンスを義務として実施しなければならない。

日本が法律を持てば政府がサポートできる。法律がなければ企業が単独で対応コストを負う。いずれにせよ12.5%は戻らない。


守ろうとした市場が消えていく

ここに、過去4年間の政治判断がいかに高くついたかの皮肉がある。

日本の政治は、米国市場での12.5%永続コストを受け入れ、中国との経済関係を守った。しかしその中国市場自体が縮小しつつある。

トヨタとホンダはBYDと中国国内EVブランドに市場を奪われ続けている。電子機器の対中輸出も同様の構造的逆風にある。守ろうとした中国市場は、ワシントンの動向とは無関係に、日本の輸出企業にとって縮小している。

同時に世界は中国を必要としない仕組みを着実に構築してきた。CHIPSアクト、IRA、UFLPA、そして今回のSection 301。これらすべてが中国起源のサプライチェーンを世界経済から切り離す方向に動いている。

日本は北京への配慮を選びながら、拡大する市場(米国・EU)でのコスト増と、縮小する市場(中国)での競争力低下という二重の損失を抱えることになった。


投資家への含意

恒久的なコスト格差。 日本の輸出企業は米国市場においてEU・英国競合に対して2.5%の構造的コスト負担を永続的に抱える。自動車部品、半導体部品、消費財での利益圧迫として長期的に現れる。

国内法なきHRDD対応。 CSDDDはEU域外の大手企業にも適用される。日本の主要輸出企業はEU市場向けに人権デューデリジェンスを実施する義務を負う。国内法がない分、政府のサポートなしに単独対応を強いられる。

立法しても関税メリットなし。 将来HRDD法を制定した場合、産業界にコンプライアンスコストが発生するが、7月24日以前に立法すれば得られたはずの10%は取り戻せない。


請求書

12.5%は単なる関税ではない。日本の政治が人権という価値を法律にするよう求められたとき、その価値にいくらの重みを置いたかを数字にしたものだ。

EUは重みを置いた。中国から報復制裁を受け、10年越しの投資協定を失ってでも、原則を選んだ。

英国は2015年に重みを置いた。

日本はガイドラインを発行した。

世界は日本の政治プロセスが自己解決するのを待たなかった。価格をつけて、先に進んだ。

請求書は永続する。そして次の請求書は、別の名目でまた届く。


出典: USTR – Section 301強制労働措置 | EU CSDDD(欧州委員会) | 前回記事:フェンタニル・ファクター(2026年6月3日) | English version

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