パソナグループ(TSE:2168)が2026年6月24日、FY2026(2026年5月期)の業績予想を再び下方修正した。純損失は▲33億円——前期(▲87億円)に続く2期連続の赤字だ。期初に¥330億円と予想していた売上高は¥308.5億円に縮んだ。
数字は結果に過ぎない。その構造を読むことの方が重要だ。
業界全体の問題ではない
まず、比較が欠かせない。同業他社の2026年業績:
| 会社 | 売上高 | 営業利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| リクルートHD(TSE:6098) | ¥3.7兆 | ¥630bn | +28.5% |
| パーソルHD(TSE:2181) | ¥1.56兆 | ¥66.5bn | +15.8% |
| パソナグループ(TSE:2168) | ¥308.5bn | ▲11.5億(赤字) | — |
日本の派遣市場全体は+9.4%成長、派遣就業者数は+3.9%増の約220万人。業界は伸びている。パソナは伸びている市場でシェアを失っている。
パソナはどうやって成長したか
この乖離を理解するには、成長の源泉を見る必要がある。
第一の追い風:規制緩和。 日本の労働者派遣法は2000年代を通じて段階的に自由化され、派遣可能な業務範囲が拡大した。その規制改革が設計されていた時期、パソナグループ会長に就いていたのは竹中平蔵氏——元閣僚で、同時期に政府の規制改革推進会議委員も務めていた。業界は構造的に成長し、パソナもそれに乗った。
第二の追い風:政府受託。 新型コロナ対応で、ワクチン接種センター運営・PCR検査業務・給付金事務処理などの政府BPO契約が大量に発生した。パソナはその主要受託企業の一つとなり、業績はピークを迎えた。
両方の追い風はもうない。竹中氏は2022年に会長職を退いた。コロナ関連業務は2023年に概ね終了した。残ったのは、自力で競争する本来の事業だ。
本来の事業の実力
パソナのコアは一般事務派遣——企業・官公庁向けの事務補助、データ入力、経理サポート、総務代行だ。これはAIによる業務自動化が最も直撃する領域でもある。
Microsoft Copilotがエンタープライズ向けOffice 365に標準搭載され、文書要約・表計算分析・スライド作成・メール起草を自動化する。「Excelが使える」「PowerPointが作れる」——かつて一般事務派遣の売りだったスキルは、AIが当たり前にこなす。競争優位は薄かったが、AIがさらに薄めた。
パソナの答えはリスキリングだ。2026年1月、大手派遣3社(パソナ含む)が「2027年までに16万人を生成AI活用にリスキリングする」と発表した。理屈は理解できる。ただし構造的な問題がある——AIツールを使いこなせる派遣スタッフが価値を持つなら、派遣先企業はそのツールを自社内で導入すればいい。リスキリングの恩恵はクライアントに流れ、派遣会社には残らない。
本当に人間が必要とされる領域——介護、看護、保育、製造現場——はパソナの主戦場ではない。ライフソリューション(子育て支援・介護)は前年比+11.2%と成長しており、数少ない明るい材料だ。ただし売上規模は¥46億円程度——赤字を出しているコア事業を補うには足りない。
リクルートとパーソルが分岐した理由
リクルートはパソナと派遣量で競っていない。収益の源泉はIndeed——採用側が求人掲載・採用成功に対して支払うグローバルなデジタルプラットフォームだ。日本の派遣事業は存在するが、利益エンジンはスケールするデジタルインフラにある。別の事業だ。
パーソルはパソナとより直接的に競合するが、規模と地理的分散という強みを持つ。東南アジアでの拡大が国内成長の鈍化を補い、キャリアサービス(転職プラットフォーム)が高マージンの紹介フィーを生む。
パソナが選んだ逃げ場は淡路島——観光・農業・エンターテインメント・ゲームを組み合わせた地方創生プロジェクトだ。「人材派遣会社が生活インフラ企業に変わる」というビジョンは構想として面白い。しかし2026年5月期Q4にゲーム事業が計画未達となり、それが6月24日の再下方修正の直接原因のひとつになった。
正直な評価
パソナの2期連続赤字はノイズではない。規制緩和の追い風と政府受託関係という構造的な優位を享受して成長した企業が、その恩恵を失ったときの実力を示している。
コアの派遣事業は規制によるマージン圧縮、同一労働同一賃金(2020年〜)によるコスト上昇、AIによる需要侵食の三重苦だ。高マージンの人材紹介は生産性問題で苦戦する。新規事業は結果を出していない。
同業他社(リクルート+28.5%、パーソル+15.8%)が成長しているという事実は、「業界が難しい」という言い訳を封じる。市場原理にさらされたとき、保護された環境で育った競争力がどこまで機能するか——FY2027の結果がその答えになる。
出典: パソナグループ IR | TDnet 適時開示(6/24) | English version
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